あしすと訪問リハビリ鍼灸マッサージ院

高齢者の寝たきり(長期臥床)による関節拘縮が進むとどの様なリスクや困りごとがあるか⁈

高齢者が寝たきり(長期臥床)状態になると、さまざまな身体的、心理的なリスクや困りごとが生じます。その中でも特に重要なのが「関節拘縮」です。関節拘縮とは、関節が正常に動かなくなる状態を指し、動きが制限されるだけでなく、生活の質や健康に大きな影響を与えます。この記事では、寝たきり状態が続くことで生じる関節拘縮のリスクと、それに伴う具体的な困りごとについて詳しく解説します。

 

関節拘縮が進む原因

関節拘縮が進行する主な原因は、長期間にわたる動かない状態です。筋肉や関節を長期間動かさないと、筋肉が縮んだ状態で固まってしまい、関節周囲の組織が硬くなることがあります。これにより、関節の可動域が制限され、動作が困難になります。

また、関節拘縮は以下のような要因も関与しています:

筋肉の萎縮:筋肉が使われなくなると、筋力が低下し、筋肉そのものが萎縮します。これにより関節を支える力が弱まり、拘縮が進行します。

関節周囲の組織の硬化:長期間動かさないことで、関節周囲の軟部組織(腱、靭帯、皮膚など)が硬化し、可動性が失われます。

痛みの回避:痛みを伴う動作を避けるために、関節を動かさないことが続くと、拘縮が悪化します。

 

関節拘縮によるリスクと困りごと
関節拘縮が進行すると、以下のようなリスクや困りごとが生じます。

1. 日常生活の制約

関節拘縮が進行すると、手足や体幹の自由な動きが制限されます。これにより、着替えや食事、トイレなど、基本的な日常生活動作が困難になります。特に、自分で動くことができないために介護が必要となり、家族や介護者に大きな負担がかかります。

2. 褥瘡(じょくそう)や感染症のリスク増大

長期間同じ姿勢でいることが多くなると、圧力が一点に集中し、褥瘡(床ずれ)のリスクが高まります。さらに、関節拘縮によって身体を自由に動かせないと、褥瘡の予防が難しくなり、褥瘡が悪化しやすくなります。また、皮膚が破れることで感染症のリスクも高まります。

3. 呼吸機能や循環機能の低下

関節拘縮が進行すると、胸郭や横隔膜の動きも制限されることがあります。これにより、深呼吸が困難になり、呼吸機能が低下します。また、血液循環も悪くなり、静脈血栓症や肺塞栓症などのリスクが高まります。

4. 心理的影響

身体が自由に動かせなくなることで、無力感や喪失感を抱きやすくなります。これが抑うつ状態や不安感の原因となり、QOL(生活の質)の低下を招く可能性があります。高齢者はもともと孤独感を感じやすいため、身体的な拘束が加わることで、心理的な負担はさらに大きくなります。

5. 合併症のリスク増大

関節拘縮が進行することで、身体の他の部位にも影響が及びます。例えば、股関節や膝関節が拘縮することで、腰痛や肩こりが悪化することがあります。また、歩行が困難になると、転倒のリスクが増え、骨折などの重大な事故に繋がることもあります。

 

関節拘縮を防ぐための対策
関節拘縮の進行を防ぐためには、以下のような対策が有効です。

1. リハビリテーション

寝たきりの高齢者に対しては、リハビリテーションが非常に重要です。理学療法士や作業療法士による定期的な運動療法や関節可動域訓練が行われることで、関節拘縮の進行を遅らせることができます。また、家族や介護者が日常的に行える簡単な運動やストレッチも有効です。

2. 適切な姿勢保持

長時間同じ姿勢でいることを避けるために、定期的に姿勢を変えることが推奨されます。適切な体位変換を行うことで、関節にかかる負担を軽減し、拘縮の進行を防ぐことができます。

3. 痛みの管理

痛みが原因で関節を動かさない場合、痛みの管理が重要です。適切な鎮痛剤の使用や、痛みを和らげるための温熱療法、マッサージなどが効果的です。痛みを感じることなく関節を動かすことができれば、拘縮のリスクも低下します。

4. 栄養管理

筋肉や関節の健康を保つためには、適切な栄養が不可欠です。特に、たんぱく質やビタミンD、カルシウムなどを含むバランスの取れた食事が推奨されます。これにより、筋肉の萎縮を防ぎ、関節拘縮の進行を遅らせることができます。

5. 精神的なサポート

身体的なケアだけでなく、心理的なサポートも重要です。定期的なコミュニケーションや、趣味活動への参加を促すことで、精神的な健康を保つことができます。また、家族や介護者の理解と支援が、心理的な負担を軽減する助けとなります。

 

まとめ
高齢者が寝たきり状態になると、関節拘縮が進行するリスクが高まり、さまざまな身体的、心理的な困りごとが生じます。しかし、適切なリハビリテーションや姿勢管理、栄養管理、そして精神的なサポートを行うことで、拘縮の進行を遅らせることが可能です。関節拘縮の予防と管理は、高齢者の生活の質を向上させるために不可欠な要素であり、家族や介護者が共に取り組むべき重要な課題です。